「自分で飼育するアリを捕まえてみたい」
きっとアリ飼育者のほとんどの方が思う事ではないでしょうか?
しかし、初めての新女王採集ってわからない事もありますよね。
- どんな準備がいるんだろう?
- 捕まえたのはいいけど、どうやって飼育するんだろう?
- 最初から大きな巣は必要なの?
そんな疑問にお答えします。
この記事を書いた人
アリ飼育用品店「あり巣 in underground」の製作担当です。
これまでにアリの飼育用品を一万個以上作っています!
※本記事で紹介する採集飼育方法は、オオアリなどコロニー立ち上げ時に給餌が要らず、土も不要の物です。ハリアリ等、積極的な給餌や繭の脚掛かりとなる土が必要な種類は該当しません。
新女王採集に必要な道具
女王採集に出かけるのにあたって、おすすめのアイテムをご紹介します。
参考にしてください。
あり巣ガン(電動吸虫管)
(↑詳細ページクリックで商品ページが開きます。在庫切れの場合、商品ページが非公開の場合があります。)
あり巣ガンは、手持ちの小型掃除機を電動吸虫管に転用するアタッチメントです。
わたし自身が作るものですが、アリ採集時の必須アイテムとして常に持って採集に出かけています。
「あり巣ガン」については、別に詳細な記事がありますのでご覧ください。
あり巣式吸虫管
(↑詳細ページクリックで商品ページが開きます。在庫切れの場合、商品ページが非公開の場合があります。)
あり巣式吸虫管は、口で吸いこむ力で小さな昆虫採集に使われている、これまでの吸虫管を一歩進化させたアイテムです。
上記の「あり巣ガン」は非常に便利ですが電動ですので、
「人目がある外で電動を使うと音が気になる」
「小型で簡単に持ち運びができるものが欲しい」
このように感じる方は、口で吸う安価なタイプもありです。
コロニー採集にも使えるし、口で吸う必要がないから、まずはあり巣ガンがおすすめだけど、音が気になるって人には「あり巣式吸虫管」もいいよ!
試験管&わた
採集した女王を保管する容器です。
わたは試験管内に水を封入するのとフタに使います。
漏斗(じょうご)
試験管の口は狭いので、あり巣ガンから移し替える時には漏斗があった方が簡単に移し替えることができます。
下記のじょうごは一例です。
100円ショップ等でも様々なサイズがあるので使いやすいものを使用してください。
通常の試験管よりも高機能な「試験管セパレーター」を最初から用意するのも引っ越しの手間がなくておすすめです。
高湿度を求める土中性の女王のコロニー化にも一助となること間違いなし!
新女王~1年目はこの巣で十分飼育できます。
値段も手ごろですので、ぜひ検討してみてください。
新女王を採集する
女王アリの見分け方
まずは、採集する女王の特徴を知りましょう。
一般的な女王アリは結婚飛行で空を飛ぶため、胸部が発達しており、羽の抜けた跡(脱翅痕、だっしこん)が見られます。
また、腹部も発達しているので全体的にワーカーと比べて太く大きな体をしています。
参考までにミカドオオアリの女王とワーカーの写真を載せますのでご覧ください。
↓ミカドオオアリ女王
↓ミカドオオアリのワーカー
種類によって結婚飛行の時期は異なる
アリの種類によって結婚飛行の時期は異なります。
自分が採集したい種類の結婚飛行がいつ行われるのかを把握するのがいいでしょう。
下記は、有名なアリの結婚飛行のおおよその時期です。
クロナガアリ | 4月 |
クロオオアリ | 5月 |
ムネアカオオアリ | 5月 |
ミカドオオアリ | 5月 |
トビイロケアリ | 7月 |
キイロシリアゲアリ | 9月 |
採集したい種類の時期を予想する
初めて結婚飛行の時の新女王に出会おうとすると、いつ探していいか見当もつかない方がいるかもしれません。
そんな人は、まずは近くの採集したい狙いのアリの巣を見つけてみましょう。
下記は、クロオオアリの例ですが、結婚飛行が近くなると、実際に飛行する当日まで下の写真のように大きな羽つきの女王を巣口で見ることができます。
羽付きの女王が巣口から顔をのぞかせていたら、1週間以内に結婚飛行が起きる可能性が非常に高いです。
まずは、採集したいアリが近所のどこに住んでいるか把握することが重要だね!
新女王を採集する
新女王採集に当たっては主に以下の2つの方法があります。
- 道を散策しながら、結婚飛行後に羽を落とした女王を探して採集する
- 灯火に集まる女王アリを採集する
灯火に集まるのは、ケアリやキイロシリアゲアリなどの走光性の強い種類だけですので、クロオオアリ等は歩きながら探すことになるでしょう。
結婚飛行の起きやすい日は、「気温が高く、風の弱い、天気のいい日」です。
「雨上がりに結婚飛行が起きやすい」なんて話も聞くけど、あんまりわたしは関係ないと思ってます。
天気、気温、風、時期、これがそろえば飛んでくれると思うよ!
新女王を見つけたら「あり巣ガン」でサッと吸い込んで回収しましょう!
試験管にはあらかじめ、下記のように3分の1ほど水を入れておき、わたで水を封印しましょう。
フタもわたですれば蟻を窒息させることはありません。
これを使うことで、採集容器とその後の保管、飼育容器が兼用になります。
通常の試験管よりも高機能な「試験管セパレーター」を最初から用意するのも引っ越しの手間がなくておすすめです。
高湿度を求める土中性の女王のコロニー化にも一助となること間違いなし!
You Tuberのぴぴんap生き物チャンネルさんがムネアカオオアリ新女王で使用している様子を動画にしてくれました⇩⇩
新女王~1年目はこの巣で十分飼育できます。
値段も手ごろですので、ぜひ検討してみてください。
女王の採集時には下記の注意点を必ず守りましょう。
採集時の注意
- 許可なく私有地で採集してはいけない
- 公共の公園などでも採集禁止場所は多いので、必ず調べる
新女王を採集したらすること
大きな巣は必要?
新女王を採集できると、大きな見栄えの良い石膏巣などに早速引っ越しさせたくなるかもしれませんが、それはすぐに用意しなくても問題ありません。
採集してきたときの試験管のまま、棚の奥など光があまり当たらず、温度変化の少ない場所で放置してください。
試験管に水が封入してあれば、ワーカー誕生までの間、ほとんどの場合、給水も不要です。
(試験管の水が無くなるようなら新たに水の入った試験管に移し替えます)
エサやりは必要?
新女王を採集した後のエサやりは「食べるのだから与える方がいい」「自然では何も食べずに子育てするのだから不要」と賛否あります。
私見で言えば、オオアリなどの野生でエサを食べずに子育てするタイプは「どっちでも大丈夫」です。
ただし、試験管などの水分を直接飲めないようなケースで飼育を開始する場合は、蜜エサや飲水を与えた方が調子が良い気がしています。
わたし自身が新女王を採集後にエサをどうしているかというと、スイーツパウダーproの水溶液を1週~2週に一度与え、暗所でワーカー羽化まで放置しています。
クロナガアリなどの種食のアリには飲水を与えています!
新女王にもおすすめの「最高のアリのエサ」はコチラ⇩
ハリアリなどの女王は、子育て中も積極的に採餌しますので、新女王の時から定期的にエサやりをしましょう!
ワーカー羽化まで至る女王の成功率
同種の新女王を同環境で複数飼育しても必ず一定割合で子育てに失敗する女王がいます。
クロオオアリ、ムネアカオオアリ、ミカドオオアリなどの有名どころは、それぞれ数百を超える数の女王をコロニー化させましたが、体感で2~3割ほどの女王が初ワーカー羽化までたどり着けません。
採集後すぐに命を落とす女王もいますし、産卵してくれない個体、また産卵してもうまく子育てできない個体もいます。
女王によって子育ての上手い下手の個性があるようです。
子育てに失敗した女王については、その後定期的に給餌すると翌年に復調し、ワーカーが誕生することもあります。
コロニー化させるコツ
新女王に子育てを成功してもらう一番のコツは「安静にしておくこと」です。
エサやりの有無、飼育容器の種類、温度など様々なことを考えると思いますが、可能なら観察も控えて暗所で試験管のまま放置してください。
給餌の要らない種類であれば、試験管内の水さえなくならなければ大した世話も必要ありません。
一番最初の飼育の場合、観察できないとつまらないと思います。
なので本当に初めてアリを飼育するのであれば既にコロニー化しているアリを購入する事も検討してください。
厳密には観察はしてもいいんだけど、その時に与える振動などのストレスが良くないと思っています。
特にクロヤマアリなど土中性のアリは振動に敏感な種類が多いですね。
ワーカーが羽化したら
春~初夏の女王を採集してから2か月もすれば、ワーカーが誕生してくるでしょう。
ワーカーが羽化したら、エサやりを本格的に開始します。
与えるエサについては、下記に詳細があるのでご覧ください。
試験管は、水が残っていればそのままでも構いませんが、エサ場があるタイプを使用すると便利です。
高価で大きな石膏巣など用意せずともこのタイプの試験管巣で1年目は十分です。
クロオオアリなど大型種では、1年目でワーカーが数匹~20匹程度になると思います。
翌年の春以降にはさらに増えるので、その頃に巣の拡張や引っ越しを考えてみてください。
その時には試験管以外にも様々なタイプのアリの巣がありますので一度ご覧ください。
お店からもたくさんのアリの巣を見られるよっ!!
まとめ
今回は、新女王採集~一年目のコロニー飼育までの流れをざっとご紹介しました。
新女王採集の後にやることはただ一つ「水を入れた試験管に入れて、ワーカー羽化まで放置」ただこれだけです。
初めての飼育だと毎日見たいし、毎日エサやりしたいしと構いすぎてしまいがちですが、女王は一匹で子育てを頑張っているので、できるだけ静かにストレスを与えないように見守ってあげましょう。
この記事が新女王アリ採集に役立てばうれしく思います。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
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今回紹介した商品まとめ
その他のアリの飼育情報を記事にまとめています。ご覧ください。
コメント
ふと気がついたのですが、最近のLEDの証明だと観察の時蟻が余り驚かないような気がします。一方同様にして天然光が入ると大慌てになっています
それは面白い観察結果ですね!
可視光線以外をアリは主としてみているのでしょうか。