アリ自身が過ごしやすい場所を選べる巣を作りたい。
私は、巣内を一律の湿度にせず、乾湿の差を作る構造を大切にしています。
自然の営巣環境から好みを予想し、実際の居場所を観察して巣づくりへ生かす。
この考え方を「乾湿選好比較法」として整理しました。
2021年の試験管判別式から現在までの歩みを、オオアリ3種・30コロニーの写真とともに紹介します。
営巣場所と乾湿選好

同じオオアリ属でも、好む巣内湿度は違うの?

種類によって違うから、土中・朽木・枯木など、自然の営巣場所を手掛かりにしているんだ。
| 種類 | 主な営巣環境 | 好む湿度予想 |
|---|---|---|
| クロオオアリ | 土中 | 湿潤 |
| ムネアカオオアリ | 朽木 | 普通 |
| ミカドオオアリ | 枯木など | 乾燥 |

自然の巣の場所から予想しているんだねっ!

その予想をもとに加湿の程度を設定して、飼育中の居場所も確かめているよ。
2021年からの試験管判別式
2021年3月30日、ありぐらで「試験管判別式」を紹介しました。

どうやって比べたの?

湿った綿で水を封入した試験管を使って、綿からどれくらい離れて集まるかを比べたんだ。
当時は、ミカドオオアリを含むオオアリ4種を比較しています。

同じ構造でも、種類によって集まる場所が違います。
その違いを、乾湿選好の手掛かりにしてきました。
2022年に試験管セパレーターを製品化し、2025年にv2へ改良しました。
湿度の異なる場所を用意する考え方は、試験管以外の巣にも広がっています。
「乾湿選好比較法」は、この考え方を引き継ぎ、試験管やほかの巣での位置選択を比べる方法として整理した名称です。
試験管セパレーターv2の湿度勾配
試験管セパレーターv2は、軽石の保水部と生活空間を分け、生活空間に3つの小部屋を設けています。

小さな試験管にも湿度差があるの?

保水部側から入口側へ湿度が変わるので、今回は3区画にプローブを入れて測ったんだ。

写真内の表示は最終測定値ではありません。
測定条件:空の試験管セパレーターv2。
周囲の気温25℃・相対湿度50%。
| 測定位置 | 相対湿度 |
|---|---|
| 保水部側 | 93% |
| 中央 | 81% |
| 入口側 | 58% |
保水部側と入口側の差は35ポイント。
小さな試験管でも、保水部からの距離による湿度差を確認できました。
3種30コロニーの乾湿選好
2026年10月、育児終了期のクロオオアリ・ムネアカオオアリ・ミカドオオアリを各10コロニーずつ比較しました。
いずれも試験管セパレーターv2を使用しています。

3種類とも、同じ場所に集まるの?

同じ3区画の構造でも、種類によって集合位置が違うんだ。
クロオオアリ|保水部側への集合

クロオオアリは10コロニーとも、保水部に最も近い区画へ集合。
女王と働きアリが仕切り付近に密集しています。
私がクロオオアリを湿潤寄りの種類として扱う理由を、写真からも見て取れます。
ムネアカオオアリ|湿潤側と集合位置の違い


ムネアカオオアリも湿潤側が好きなの?

湿潤側が多いけれど、仕切りから離れたり、中央側の区画を利用したりする群れもあるよ。
同じ湿潤側でも、クロオオアリほど一様に仕切りへ密着せず、区画内の集合位置に違いが見られます。
ミカドオオアリ|中央付近への集合

ミカドオオアリは中央付近に集まるコロニーが多く、保水部側への強い集中は見られません。
3種の中では、比較的乾燥した場所を利用する傾向が読み取れます。
3種の比較
| 種類 | 今回の写真で見られた特徴 |
|---|---|
| クロオオアリ | 保水部側に集中し、仕切り付近へ密集 |
| ムネアカオオアリ | 湿潤側が多いが、集合位置にばらつき |
| ミカドオオアリ | 中央付近の利用が多い |
2021年春と2026年10月の育児終了期では、比較した種類や器具は異なります。
共通するのは、湿った場所からの距離と、アリ自身が選ぶ居場所を見ることです。
乾湿選好を生かした巣の設計

観察したことは、巣づくりにどう生かしているの?

保水部・通気部・巣室の配置を考えて、加湿しながら乾いた場所も残すんだ。
試験管セパレーター

奥の軽石保水部と3つの小部屋で、距離によって異なる湿度を選べる構造です。
今回の30コロニーの写真も、この構造を利用しています。
二層式の巣

下部に保水層を設け、巣室へ湿気を伝えるメッシュを一方へ寄せています。

どうして片側に寄せているの?

保水部に近い側と遠い側を作るために、加湿部を通気のよい餌場から遠い側へ寄せているんだ。
タワー型の巣

下部の保水層と上部の通気を利用し、上下方向に湿度差を作ります。
上部の通気キャップで通気条件も調整できます。
平面でもタワー型でも、アリ自身が異なる環境を選べるようにする考え方は共通です。
推奨湿度レベルの考え方

湿度レベルは、何を目安にしているの?

相対湿度を5等分したものではなく、加湿の程度と、巣内に作る乾湿の差を示す目安だよ。
種類別飼育用品ガイドでは5段階で案内し、今回の3種は次のように設定しています。
| 種類 | 湿度レベル | 加湿の考え方 |
|---|---|---|
| ミカドオオアリ | 2 | 乾燥を主体に、一部に湿潤域を作る |
| ムネアカオオアリ | 3 | 乾燥域と湿潤域をバランスよく作る |
| クロオオアリ | 4 | 湿潤域を主体に、乾燥域も残す |
今回の58%・81%・93%は、湿度レベル2・3・4に一対一で対応する数字ではありません。

数字だけじゃなくて、アリが選ぶ場所を見るんだねっ!

どのような湿度勾配の中で、どこを利用しているかを重視しているんだ。
乾湿選好の飼育への応用

飼育記録が少ない種類は、どう考えればいいの?

新しく輸入された種類も、まず自然界での営巣場所を調べるよ。

実際の好みは、どうやって確かめるの?

乾湿の異なる場所を選べる環境で居場所を観察して、好みがわかっている種類と比べるんだ。
比較した結果を手掛かりに巣の種類や加湿方法を選び、飼育中の様子に合わせて調整します。
乾湿選好は、長期飼育の環境を考えるための重要な材料の一つです。
まとめ
自然の営巣環境から予想し、アリ自身の選択を観察する。
その結果を、保水部・通気部・巣室の配置へ反映するのが、私の乾湿選好比較法です。

アリが自分で居場所を選べる巣なんだねっ!

2021年の試験管判別式から今の試験管・二層式・タワー型へつながるこの考え方を、これからも巣づくりに生かしていくよ。








